日経新聞「あすへの話題」 2015年7月1日

今日、本州各地の海水浴場で海開きが行われた。
20日は海の日である。梅雨の最中ではあるけれど、
いつも今頃になると、今年も海の季節が始まるなぁと思う。
 ところで海が世界中の天気と密接に関わっていることをご存じだろうか?地球の表面積のおよそ70%を占めている海からは常に水蒸気が蒸発していて雲をつくり、積乱雲や低気圧、台風を発達させている。これらは大気をかき混ぜ地球の気温を一定に保つ働きをしている。また去年の夏から始まったエルニーニョ現象は、ペルー沖・赤道付近の海水温が高くなる現象で、世界中に異常気象をもたらす原因の一つと言われるが、日本でも今年の梅雨明けや夏の天候が心配されている。
 そして地球の温暖化も海なしで語ることはできない。海洋は温暖化の主たる原因である我々人間が出す二酸化炭素(CO?)を約30%も吸収して、現在は温暖化の進行を和らげてくれている。ところがこのまま温暖化が進んでさらに海水温が高くなると、その吸収能力が落ちるのではないかとも懸念されている。台風、偏西風の流れ、温暖化による雨の降り方など、海と気象との関わりはとても深いのだが、その研究は、ごく最近始まったばかりである。
 その昔初めて宇宙から地球を見たガガーリンは「地球は青かった」と報告したが、あの青い地球の色は海であったのだ。気象衛星からの写真では地球は今も昔と変わらずに青く美しい水面を湛え、真っ白な雲を浮かべているように見えるが、海を取り巻く環境は著しく変化している。私には21世紀は海が、私たちの生活を方向付ける鍵を握っているように思えてならない。
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