日経新聞「あすへの話題」 2015年12月2日

中緯度温帯地域にある日本では四季の巡りが美しい。地球が約23.4度傾きながら太陽の周りを回っているからこその偶然の賜物である。私は時々学生たちに個人的にはどの季節が好きか、もし恋人とデートするならいつが好きか?とたわいのない2つの質問をしてみる。
先日の結果は、冬が34%とやや多く、次いで夏と秋は大して差がなく、春を好きと答えた人は全体の13%と一番少なかった。花粉症に悩まされるので春をつらい季節と書いた学生が多い。春は芽ぶきや始まりに、夏の太陽のもと海や山でのスポーツに、秋風や紅葉に、さらには冬の朝のぴりっとした空気、夜空の美しさに若者なりの季節を実感していることが分かった。季節の変わり目が好きと答えた人も何人かいる。
 さらにデートするにはどんな季節が良いかでは、冬が63%と圧倒的に多い。クリスマスやバレンタインをはじめ恋人向けの行事も多く、イルミネーションもロマンチックで、スキーにスケートにと、冬は一番人気の高い季節となっている。
そしてやはりここでも春は人気がなく、夏とともに10%足らずであった。
 15年ほど前に同じような質問を、赤坂見附駅で待ち合わせをしていた人達にしたことがあった。この時は春と秋とが半々で、春は「これからなにかいいことありそうで浮き浮きしてうれしい」秋は「人恋しくなるから」とのことであった。昔から
春は恋の季節と言われて来た。平安時代、秋は厭きに通じて恋が余りうまく行かないと思われていたふしがあり、不毛の季節である冬の恋も、源氏物語の匂宮と浮き舟の雪の場面ぐらいしか私には思つかない。現代の恋人たちにとっては冬が恋の季節と言えそうだ。
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