日経新聞「あすへの話題」 2015年9月2日

 雲を眺めるのが好きで、幸いにも飛行機で窓側に座れた時など、首が痛くなるのを忘れ何時間でも眺めてしまう。先週に続きまた雲の話である。雲は小さなちいさな雲粒が集まって出来ている。1つの雲粒の大きさは0.003ミリ〜0.01ミリで、雲粒が約100万個集まって1粒の雨になるくらいなので空に浮かんでいることができるのもうなずける。風に流され大空を落ちながら雲粒は消え、雲の形は刻々変わる。他の雲に気を取られている間に、馬がくずれて子犬もどきの雲となったりする。
雲が出来るのは地上から10〜13㎞までの対流圏内である。地上で10㎞といえばすぐ近くだが、空気の存在する範囲は地上からそのくらいの高さまでにすぎない。その昔、手塚治さんが「ガラスのような地球を救え」と言ったけれど地球を取り巻く空気の層はガラスのように薄いのだ。その薄い層の高さによってさまざまな雲が出来る。雲は10種類の形に分類されていてこれを10種雲形といい、世界共通の分類である。
地上から空を見上げると高さの違う処に出来た雲が重なって、皆一緒になって見えるが、実は雲と雲の間隔は何千mもあったりする。
雲の高さの違いを実感できるのは何と言っても、夕焼けどきではないだろうか?はじめ地上近くにある一番低い雲が夕焼け色に染まり、太陽が沈んで光が当たらなくなるにつれ、雲は鼠色に変わり濃さを増す。そのころには夕焼けは3千mから5千m上空の雲に移り、暗くなってゆく青空を背景に薄墨色やオレンジ、ピンク、茜色とさまざまな夕焼け色のグラデーションを見せてくれるが、高いところの雲はまだ白く輝いていたりする。どうか夕焼の空を眺めてください。
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