日本海の台風が気になるが、季節の変わり目の今頃は雲を見るのが楽しい。ぼーっと雲を見つめているといろいろなことに気付く。一見止まっているように見える雲も実は常に形を変えながら動いていること、綿雲などの積雲から鳥の羽根のように軽やかな巻雲まで、雲にはいろいろな種類があること等々。さらにもし運が良ければ、頭上のもこもこした積雲とずっと上空にある卷雲などが、時に全く逆の方向へ動いていることに気付いたりする。雲は風に流され、上空風を吹く風は高さによって方向が異なる。さらに風は季節によって変化する。別の言い方をすれば、風が季節を運んで来る。
夏と秋と行きかふ空の通ひ路は かたへすずしき風やふくらむ 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
千百年以上昔、躬恒は 二つの雲の流れの違いから、やって来る秋のサインを受け取りこのような歌を残した。
〜暑い盛りに空を見上げると、夏の雲と秋の雲が互いに逆の方向から流れて来て行き逢いすれ違って行く。きっとあの雲の片側では涼しい秋の風が吹いているのだなぁ〜
かたへとは片側のこと、私はこの場合の片側を、躬恒が空を水平に区切って上層と下層という立体的な空間として捉えていたことに驚かされる。夏の積雲が太平洋側から日本海の方へと流れ、一方、ずっと上空には秋になると良く見られる卷雲が、夏の雲とは逆に日本海から太平洋へと流れて行く。まさか卷雲が氷の粒で出来ていることを知ていた筈はないけれど、暑い最中に卷雲を見て秋の涼しさを感じた躬恒の感覚に敬意を表したいと思う。
雲が楽しく美しい季節、ゆったりと雲を見つめてみませんか?