今、私は三週間ほどに迫った自分のライフワーク「石井和子の朗読ライブ⑪」の準備に追われている。恥ずかしながら思いおこせば単純だ。小学校の授業で褒められて以来の朗読好きで、これからも朗読でいろいろな作品に挑戦して行くことが出来たらどんなに幸せなことかと思っている。気象予報士になってからは宮沢賢治はじめ文学作品のなかの気象に焦点を当てながらの朗読が多く、去年は「源氏物語と気象」をテーマに、原文を混じえながらの気象の話、第二部では瀬戸内寂聴さんの「女人源氏」から「萩の露」を中心に朗読をさせていただいた。今では幻の楽器と言われる菅原 さんの箜篌(くご)の調べも好評だった。
さて今年はぐっと渋く深沢七郎の「楢山節考」を選んだ。おりんばあさんに焦点を当てて、映画やお芝居とはまた違った朗読ならではの「楢山節考」への挑戦が可能かどうか?姨捨の伝説はかなり古く、平安時代のものから柳田國男氏の「遠野物語」に至るまで各々話も違う。深沢七郎の描く「楢山節考」の世界・・70になったらお山へ行って命を終えることが当然である社会に生きる人々の、明るいたくましさや人間臭さ、人情、貧困、やさしさ、おそろしさ等々・・いつもながらこの時期に思えば思うほど、厚かましくも朗読を聞いていただく自分のずうずうしさがやりきれなくなって、正直のところ冷や汗とともに胃が痛くなっている。演出は岩澤敏氏、キーボードは竹田裕美子さん、その他たくさんの方々に支えていただいている。
何よりも毎年聞きに来てくださる方々に感謝している。その昔TBSのラジオ番組「土曜ワイドラジオ東京」以来の方々や白山蓮華寺の「白山朗読の会」の仲間たちだ。まだある10月23日までの残る日々をひたすら謙虚に積み重ねる他ないのだと思うこのごろである。