日経新聞「あすへの話題」 2015年9月9日

コスモスや菊など秋の花の前線は北から南へ、山から里へと降りてくる。さくらやすみれをはじめ春の花が南から北へ咲き出すのとは逆である。それはおおむね8月が転換期となるらしい。夏至を過ぎて昼間の時間が短かく夜長になってくると蕾の元(花芽)をつくり始める植物を短日植物という。種類によって花芽をつける時期はまちまちである。これは日長の変化が植物のホルモン生成や分泌に影響を与えるためと考えられている。面白いことに花芽が出来るまでは太陽の光が大切で、充分な光合成を行い花芽を作るためのエネルギーを蓄えるが、花芽が出来る頃になると昼よりも連続した夜の長さのほうが大事となる。夜中に光を当てたりすると花芽は出来ない。寝る子は育つではないが、途中起こされることなく光のないところでぐっすり眠るとよいようだ。菊は昼の長さが13〜14時間位、夜の長さが10〜11時間位になると花芽を作り始める。今日9月9日、東京の昼の長さは12時間39分、夜は11時間21分である。近くにある用賀フラワーランドに電話をして聞いてみたところ、花芽形成が間近なので10日ごろが最後の芽摘みになるという。芽摘みとは茎を枝分かれさせるために芽を摘む作業だ。以後、花芽を大きく成長させるために芽摘みはしないという。天気が悪く株が充実していないと、花芽の数や大きさに影響するので、この8月中旬からの天候不順がどのように影響しているのか気になるところである。
今日は菊の節句とも言われる重陽の節句だが、本来は旧暦であって今年は10月22日にあたる。短日植物である菊もこれから開花に向けての準備が始まる。丁度10末には見ごろを迎えそうだ。
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